引用元:読売新聞オンライン
主要大会が行われてきた東京辰巳国際水泳場(東京都江東区)が、3月末で閉館した。五輪代表を決める日本選手権などで多くのドラマが生まれた「競泳の聖地」に対し、多くのスイマーが別れを惜しんだ。 同水泳場は、1993年に5000席の観客席を備えた国内最大級の公認プールとして開館。国際大会やジュニア世代の全国大会も行われ、このプールからトップ選手が多く育った。2021年の東京五輪では水球の会場として使用された。 3月18日に開催された「東京都マスターズ」には、男子平泳ぎで4個の五輪金メダルを獲得した北島康介さんらオリンピアンが出場。北島さんにとっても世界記録を樹立した特別なプールで、レース後「いい思い出だけでなく、涙をのむ選手もたくさんいた。プールの量ぐらい涙で埋まっているのが辰巳。それがこの30年間」と名残を惜しんだ。 現役選手にとっても思い入れの強い場所で、東京五輪個人メドレー2冠の大橋悠依(イトマン東進)は「地方(滋賀県)出身の者からすると、辰巳は天国のような環境。ここに来るのが毎回楽しみだった」。池江璃花子(横浜ゴム)も閉館を知って涙したといい、最後のレースは「ありがとうと思いながら泳いだ」と振り返る。 主要大会は今後、東京五輪会場でもあった近接の東京アクアティクスセンターで実施され、同水泳場は2025年にアイスリンクへ生まれ変わる。北島さんは「またアクアティクスセンターで、若い選手が新しい歴史を作ってくれることを願う」と、次の世代に思いを託していた。(森井智史)