灼熱(しゃくねつ)の暑さがうそだったかのように、秋風が涼しい季節になった。夏がシーズンの飛び込み競技。多くの選手たちは、先月行われた「いちご一会とちぎ国体」を最後にシーズンオフに入り、また来シーズンに向けて練習の日々が始まった。
「スポーツの秋」には、さまざまなスポーツイベントが開催される。
私の出身地である石川県でも、10月10日の「スポーツの日」に「水泳の日2022金澤」が開催された。
私もオリンピアンとして、トークショーや飛び込み講師として参加。新型コロナウイルス感染拡大予防対策をしながらではあったものの、昨年よりも多くの方々が会場に集まり、活気ある雰囲気にうれしくなった。
午前中の体験会では、競泳、水球、OWS(オープンウオータースイミング)、AS(アーティスティックスイミング=旧シンクロナイズドスイミング)、日本泳法、そして飛び込みの6種目が行われた。
一口に「水泳」と言っても、それぞれ特徴がある。特に飛び込みは、水泳競技ではあるが演技のほとんどが陸だ。そのため、まずは陸での動きをしっかりとレクチャーしてからスタート。経験者もいれば、初心者もいる。無理してケガをしないよう1人1人に確認しながら、それぞれに合ったレベルで楽しんでもらった。
飛び込み教室に参加してくれた中に、私の娘と同じ4歳の女の子もいた。泳げるかな? 飛べるかな? と少し心配になるほど小さな体。しかし、飛び込み台に上がると、最初に教えた通り指先までピンと伸ばし、しっかりとした姿勢で先端に立った。そして、思い切ってジャンプ!!
初めは少し怖がっている様子もあったが、1本飛ぶごとに自信がついていき、楽しそうに何度も何度も台に上った。小さな成功体験を繰り返し、終盤には大人顔負けのダイナミックなジャンプができるまでになっていた。まだあどけなさが残る小さな女の子が一生懸命に飛ぶ姿。そのかわいらしさとたくましさに、周囲には笑顔と拍手があふれた。
海外では飛び込みプールを一般開放している国はたくさんある。私がよく合宿で訪れていたアメリカでも、夏になると一般の利用者が遊びで飛んでいた。そして、その横で私たち選手が練習する光景が普通だった。
しかし、日本では安全上なのか国民性なのか、なかなかそうはいかない。そのため今回のようなイベントは、簡単に経験することのできない飛び込みを知ってもらうとても貴重な機会なのだ。
やわらかい日差しと過ごしやすい気候になり、スポーツを始めるにはピッタリの季節がやってきた。美しい紅葉を見ながら簡単な運動から始め、来年は飛び込み教室に参加してみてはいかがだろうか。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)
4歳の女の子も飛び込み台から大胆ジャンプ!「水泳の日」に見た素敵な光景/中川真依

引用元:日刊スポーツ