【世界陸上】女子やり投げ銅メダル・北口榛花の高校恩師 「ダメ元で」誘った陸上への道

【世界陸上】女子やり投げ銅メダル・北口榛花の高校恩師 「ダメ元で」誘った陸上への道

 ◇陸上・世界選手権第8日(2022年7月22日 米オレゴン州ユージン・ヘイワードフィールド)

 もし陸上への誘いがなければ、この銅メダルは生まれていなかったかもしれない。バスケットボールをしていた両親のもとで育ち、幼少期から水泳やバドミントンに打ち込んできた北口榛花は、高校ではクラブチームで水泳に専念する予定だった。一方、旭川東高で陸上部顧問だった松橋昌巳さん(67)は北口の先輩から「こんな子がいますよ」と伝えられており、入学式で初めてその姿を見た。

 「体が大きいし、肩幅もある。身体能力も高い。彼女自身、水泳という目標があったからダメ元で声をかけました。最初は“水泳と陸上の両方やってもいいならやりたいです”となった」

 練習は水泳と半々。アップを終えて投てき練習を本格的に始めようとすると「それじゃあ水泳に行ってきます」と帰ることもしばしばだった。だが、入部から1カ月あまりで迎えた6月の道大会。やり投げで大会記録を上回る45メートルを投げて北海道で一番になった。「本人もビックリしたし、周りも“なんだこいつ”みたいになっていた」と松橋さんは当時を振り返る。

 その年の9月7日、2020年に東京で五輪が開催されることが決まった。「これはお前が出る試合だよ」。松橋さんに言われても高1の北口はピンときていなかったが、秋の日本ユースでは49メートルを投げて3位。自分の可能性に気付き、ここで水泳を辞めて陸上一本に絞った。

 高2の頃には日本陸連の「ダイヤモンドアスリート」に認定され、高3時には全国高校総体、国体、日本ユースを制して3冠。コロンビアで開催された世界ユース選手権には女子主将としてサニブラウンらとともに出場し、見事に優勝を果たした。

 「北口は自分の想像の上を絶えずいっている。ここまで頑張ってくれれば…と思う、その上をいつも行く。競技に懸ける思いや向上心は一般人の枠をはるかに超えている」

 日大進学後はコーチ不在の期間も長く続き苦しんだ。昨夏の東京五輪では左脇腹を痛めて不完全燃焼に終わった。それでも、再び日の当たる場所に戻ってきたことで「元気になったので安心しています」と笑みを浮かべる。

 北口が掲げる最大の目標は「世界記録」で、08年にチェコのシュポタコバが投げた72メートル28。「本人が目指すと言うなら、自分たちも信じてみたい。北口はいつも“そこまでいかんだろう”という上をいくので、楽しみにしています」。そう語る松橋さんの車のナンバーは「7228」。教え子のさらなる飛躍を北の大地から願っている。

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