シンクロ板飛び込み「銀」の三上と金戸、個人種目の悔しさバネに飛躍/中川真依

引用元:日刊スポーツ
シンクロ板飛び込み「銀」の三上と金戸、個人種目の悔しさバネに飛躍/中川真依

 ハンガリー・ブダペストで行われていた水泳世界選手権。飛び込み競技の最終日となった3日に、これまでにない大快挙を成し遂げてくれた。女子3mシンクロと男子10m個人の2種目で日本勢史上最高位となる銀メダルを獲得したのだ。

 日本の飛び込み界にとって、これほどうれしいニュースがあるだろうか。日本が世界選手権で表彰台に上がったのは2001年福岡大会以来。長い間伸び悩んでいた日本の飛び込み界に、新たな歴史が刻まれた。

 まずは女子3mシンクロ。この種目に出場したのは、三上紗也可(21=日体大)、金戸凜(18=セントラルスポーツ)組。昨秋にペアを組んだばかりとは思えないほど貫禄のある同調性で今回の代表を勝ち取った。私も、組んだ当初から「この2人ならいける」と感じていた。

 三上は2019年の世界選手権で5位に入賞し、東京オリンピックの出場権を獲得。一気に世界のトップ選手の仲間入りを果たした。今大会でも個人3mでは、予選、準決勝と「世界のトップ」だと言わんばかりの演技で決勝へ進出。決勝では、予選、準決勝ともに課題を残した205B(後ろ宙返り2回半エビ型)を成功させ、ラスト1本を残して2位につけていた。このままいけば悲願のメダル獲得だと誰もが期待した。

 しかし、最終種目の大技「5154B(前宙返り2回半2回ひねり)」でまさかの大失敗。つかみかけていたメダルはするりと手からこぼれた。結果は7位。これも素晴らしい成績ではあるが、あと1歩でメダルを獲得できたと思うと、とても悔やまれる結果となった。しかし落ち込んでいる暇はない。すぐに気持ちをシンクロ種目へと切り替えた。

 パートナーである金戸は、東京オリンピックを控えた時期に痛めていた肩が悪化。選考会への出場を断念せざるを得なかった。その後も、手術やリハビリでしばらく練習ができない状況が続いた。しかし、諦めることなく少しずつ練習を再開。地道な努力で着実に力を付け、今回の出場権をつかみ取った。

 今大会では、シンクロのみの出場だったが、この1試合にかける気持ちは誰よりも大きかっただろう。そして三上も、個人種目の悔しさを力に変えて臨んだに違いない。

 公私ともに仲のいい2人。試合前はもちろん、試合中もお互いを励ます姿や、談笑する姿がみられた。

 予選は5位で通過。少しハラハラする場面はあったものの、決勝はまたゼロからのスタートになる。きっと決勝では実力を発揮してくるだろうと期待した。

 決勝1本目から首位を走っていたのは連覇を狙う中国。日本も安定感のある演技でスタートし、中国を追いかけるように2位をキープ。3位には、メダルの常連国であるオーストラリアが僅差で追いかけてくる試合展開だった。

 試合後半も、2人ともの持ち味である「丁寧で美しい演技」をしっかりと見せつけ高得点をマーク。最後まで2位を守り抜き、悲願の銀メダルを獲得した。試合後に「とても緊張した」と話していたが、その言葉を全く感じさせない素晴らしい演技だった。

 ラスト1本を飛び終え、銀メダルだと分かった瞬間に抱き合う2人。安堵混じりの笑顔に、私も心からおめでとうの気持ちがあふれた。

 今回は、オリンピック後の世界選手権ということで、各国が若手選手の育成にシフトしていることがうかがえた。2024年パリ・オリンピックまでに、どの国もメダル獲得に向け強化してくることは間違いない。そこでも日本の国旗が輝くよう、今後の2人の成長が楽しみである。

 (中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)

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