物足りない五輪公式映画サイドB よく効いた〝皮肉〟には笑いも

物足りない五輪公式映画サイドB よく効いた〝皮肉〟には笑いも

【ベテラン記者コラム】

表面的で物足りない。昨夏の東京五輪の公式映画第2部で、きょう24日公開の「東京2020オリンピック SIDE:B」(河瀬直美監督)を鑑賞し、そう思った。

当コラムで以前、アスリートを中心に描いた第1部「SIDE:A」について「人々の人生の記録という点で、よくできた作品」と書いた。ただ今大会のポイントは新型コロナウイルスの流行による史上初の延期など、世界情勢に振り回された競技外の面。そうした部分を描くという「~B」を見ないと最終的判断はできないと考えていた。いざ鑑賞して、私の総体的評価は下がった。

序盤に大会組織委員会の2020年仕事始めで森喜朗会長が「何が起きるか分からない」と職員の気を引き締める場面がある。東京五輪の陸上男子400メートルリレー決勝で日本が得意のバトンパスに失敗する場面が入る。コロナ禍と大会延期という、誰も予想できなかった事態を暗示する演出手法はいいが、本題はどれも、表面をなぞっただけとしか感じられない。

延期を議論する組織委の会議という、報道陣にも見ることのできなかった貴重な場面が映され、緊迫感は伝わってくる。だが何が問題だったかは具体的に説明されず、どれほどの焦燥感があったのかがピンとこない。

実際には否定的な世論の中、どこまで膨らむか分からない経費や、施設などとの再契約、感染症対策…と、当初は暗中模索だった。そこから組織委は国や東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などと協議を重ね、延期という誰も経験したことのない事態で開催への道筋をつけていった。

「(大会を)やるか、やらないかの判断をするのは開催都市の首長。組織委の使命はどうしたら開催できるかの工夫をすること」だったと、組織委の武藤敏郎事務総長は21日の記者会見でも振り返っている。記録映画なら語るべき、そうした苦悩や努力の様子は、この映画からは見えづらい。

今月末に解散する組織委は、大会報告書とともに報告映像をIOCに提出している。一般非公開なので本来なら比較すべきではないが、何が計画され、コロナ禍で何が課題となり、どのように解決して実行されたかがうまくまとめられている点で、こちらの方が記録映像としては出来がいい。

では「~B」が、かかわった人たちのドラマを十分に語っているかというと…。延期に振り回され、期待された成績を残せなかった競泳の瀬戸大也やバドミントンの桃田賢斗、よりよいモノを提供しようと努力するグラウンド整備や選手村食堂の責任者らを取り上げたのはいいが、総花的だ。そもそも「~B」は「大会関係者、一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートを描く」とうたっていたが、ボランティアや医療従事者が努力したり苦悩したりする姿は出てこない。

森会長の辞任劇や、野村萬斎氏ら式典演出担当陣が外された件でも深い部分は語られない。私の期待が高すぎただけなのかもしれないが、「こんなものか」なのだ。

よく撮って織り込んだと称賛したい部分も紹介しよう。IOCのトーマス・バッハ会長が広島の原爆記念館を訪れた際だったか。五輪中止を訴えるデモ隊にバッハ氏が近づき、「話し合いましょう。話し合う気があるならマイクを下ろして」と呼びかける。しかしデモ隊のリーダーらしき、顔をぼかされた人物はマイクを下げず、大音量で五輪中止を叫び続けた。

気に入らない意見など聴く気はない-。大会の主要テーマ「多様性」を頭から否定するとは「さすが反対派だ」と、よく効いた皮肉に思わず笑ってしまった。(只木信昭)

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