情報BOX:国際水連のトランス選手新指針、内容と決定理由

引用元:ロイター
情報BOX:国際水連のトランス選手新指針、内容と決定理由

[20日 ロイター] - 国際水泳連盟(FINA)は、出生時の性別と自認する性が異なるトランスジェンダーの選手が、女子競技に参加することを制限する新指針を採択した。併せて、トランスジェンダー選手が出場できる「オープン」カテゴリーの創設を検討するための作業部会を立ち上げた。

新指針の内容と、FINAが説明している採択の理由についてまとめた。

<新指針を採択した理由>

FINA幹部らは、女子競技の公平性確保が新指針の狙いだと説明している。

FINAが引用する科学的根拠によると、女性に転換した男性(トランスジェンダー女性)は、ホルモンセラピーや男性ホルモンのテストステロン低減といった治療を受けても、女性に対して身体上の有利性が保たれる。

この問題に関するFINA諮問委員会メンバーである運動生理学者、サンドラ・ハンター氏は「14歳以上になると、男女差は非常に大きくなる。これはテストステロンにおける生理学的適応と、Y染色体の保有による有利性に起因する」と説明している。

「この身体的有利性の中には、身長、手足の長さ、心臓や肺の大きさなど、もとより構造的なものが含まれる。これらは男性から女性への転換に伴ってテストステロンを抑制もしくは低減しても維持される」という。

<大きく変わる点>

FINAの新指針では、トランスジェンダー女性による女子競技への参加が認められるのは「男性の思春期のタナー段階2より先の段階を全く経過していない、もしくは12歳未満であることを、FINAが十分納得できるよう立証できる」場合に限るとしている。

<タナー段階2とは>

男子は通常、11歳から12歳に思春期が始まり、16歳から17歳で変化が完了する。タナー段階2は5段階ある思春期の2段階目。段階が進むスピードは多くの要因によって異なってくるが、男子は12歳か13歳までにタナー段階2を終えて3に入ることがある。それより早い場合も遅い場合もある。

タナー段階2は、生殖器の発育、生殖器周りや脇の毛髪、身長の伸びといった身体的な変化が始まる段階を指す。

<トランスジェンダー男性の新指針>

トランスジェンダー男性の水泳選手の場合は、身体的な有利性が無いため、男子競技への参加が認められる。

ただ、ホルモン治療の一環としてテストステロン治療を受けている、あるいはその他のアナボリック(筋肉合成)物質を摂取している選手は、ドーピング規制に則って「治療目的使用にかかる除外」の適用を得る必要がある。

男性ホルモンを外部から摂取していないトランスジェンダー男性は、女子として競技に出場できる。

トランスジェンダー女子選手は、体内の男性ホルモンを抑制する治療を受けていても受けていなくても、引き続き男子としての出場資格がある。

<全ての水泳競技に適用されるのか>

新指針は、FINAが認めるFINAの競技と大会にのみ適用される。世界選手権と五輪大会は適用対象。新指針はFINAの世界記録認定にも影響する。

従って、国ごとの連盟、その他の組織が運営する大会については、これらの組織が責任を担う。ただ、FINAは新指針について「世界中で一律運用されることを意図している」と表明している。

<認定プロセス>

FINAの競技への出場を認められるためには、どの選手も自国の水泳連盟に染色体上の性別を証明する必要がある。

トランスジェンダー水泳選手はFINAに対し、当該カテゴリーでの出場資格があり、身体検査に応じる意思があることを証明するため、総合的な医療歴、その他のエビデンスを提出しなければならない。

外部専門家が提出資料を検証し、出場資格の有無を決定する。

FINAは選手のテストステロン・レベルについて任意もしくは目標を絞った検査を行うことで、状況を監視することもできる。

FINAはまた、トランスジェンダー選手として申告していない水泳選手について調査を行うことも可能。

水泳選手はFINAのいかなる決定についても、スポーツ仲裁裁判所に控訴することができる。

<「オープンカテゴリー」とは>

FINAは「男子」、「女子」競技と並んで新たに「オープンカテゴリー」という枠を設けるため、作業部会を立ち上げた。

「その大会の出場基準を満たした人がだれでも、性別、法律上の性、性自認に関わらず競技できる」カテゴリーの実現可能性を検討する、としている。

<他の競技にも適用されるか>

適用される。水泳だけでなく、ダイビング、水球、アーティスティックスイミング、飛び込み、オープンウォータースイミングなど、FINAの競技全般に適用される。

<アスリート・アライは否定的見解>

米国に拠点を置く活動団体「アスリート・アライ」は新指針について「非常に差別的、有害、非科学的」であり、国際オリンピック委員会(IOC)の姿勢から逸脱している、との見解を出した。

アスリート・アライの指針・プログラム担当ディレクター、アンヌ・リーバーマン氏は、女子カテゴリーの出場資格基準について「女子カテゴリーに出場したい全選手のプライバシーと人権を深刻に侵害しなければ実行できない」ような身体検査を伴うと批判した。

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